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これぞ、プロ

 世界の艦船8月号の元海幕長 武居智久著「哨戒艦は海上防衛力整備の「異端」となりうるか」の感想です。

 基盤的防衛力整備構想は、防衛力整備の理論的な根拠や目標値を政府として公にしたという「光」と予算削減圧力を受け続けた際に大綱水準に安住し、脅威を見積もって所要の防衛力を算出する努力がおろそかになったという「陰」があるとしています。
 ありがちな話ですが、88艦隊構想は予算要求上のレトリックだったものが、それであれば良いとされ、また、逆にヘリは8機あれば良い=それ以上要らないとして、DDGに搭載する必要性を認めない根拠とされたなどの副作用も多々あるとしています。
 これは今でも残っていて30FFMの調達数が22隻なのは、22隻必要だから、ではなく、護衛艦の数が合計54隻とされているので、88艦隊4個群32隻を引くと残りが22隻なだけですね。
 哨戒艦はこれらと違って、基本的には新規に追加されるものです。ミサイル艇は支援艦艇の置き換えという意見もあるけれど、それらはそれらで必要なので早期に退役させることはないだろう、つまり、FFMと違って既存艦の置き換えという「財源」が明確に存在していないとしています。この部分には、個人的は異論もあります。ひうち型はともかく、ミサイル艇はその存在価値を既に失っているので哨戒艦と入れ替わることでしょう。乗員の確保という観点からもそれは必要だと思います。とはいえ、整備の段階で明確に既存艦の置き換えになっていない、のはその通りでしょう。
 著者は財源がないにもかかわらず、哨戒艦を12隻も建造するのはそれだけ防衛所要が逼迫しているのだろうとしています。これはまさにその通りでしょう。世界の艦船にも掲載されていますが、日本周辺に出没した他国海軍艦艇の写真は水上艦の場合、必ずしもDDではなく、支援艦だったり補給艦だったりする場合もあります。これは平時の警戒監視任務にあてる船が足らないことを意味しているでしょう。
 少子高齢化による人的資源減少について強く警鐘を鳴らしています。2060年に日本の人口は26%減少するとされているので、このままだと海自の人員も約3割減少します。これから建造される艦艇は30年以上使うでしょうから、定員は3割減らさないと運用できないとしています。
 現在、艦艇の乗組員は合計で約15200人。FFMと置き換えられるDD/DE/MSCの乗員は合計で約3200人。FFMが22隻分+複数クルー制のための追加7隻分で合計2900人なので、その差は約300人です。単純計算で行けば、哨戒艦に1隻25人を割り振れますが、FFMは省力化を進めるため、潜水艦同様に充足率100%を保つ必要があるだろうから、実際にはそこまでの人員余裕はないだろうとしています。
 そうなると哨戒艦は、いずれは無人化し、USVにならなければならないというのが著者の主張で、これはその通りでしょう。しかし、それには法的な問題もあると指摘しています。無人であるため、簡単に言えば、軍人(自衛官はそれに順ずる)が乗っていないので、軍艦として認めれません。もちろん、今後は変わっていくでしょうが。また、仮に戦闘に至った場合の問題もあります。
 個人的には哨戒艦は基本的には平時に主に活躍するので、RPASと同様にリモートで、陸上から少数のクルーが運用しても良いとは思います。そうであれば、実際に乗り込んでいなくても、軍人の指揮下にありますし、万一の戦闘時も判断は人間が下せます。これなら人数も少なくて済みますし、ローテーションを組んで動かせば、夜勤はあるものお、自宅から通勤できます。
 著者もスパイラルにUSVへの進化が必要とし、最終的は完全無人化を目指すべきとしています。第一段階として、少数の乗員の運行に特化したが乗り込み、装備機器の管制、データ処理は陸上から遠隔操作し、第二段階は完全無人化を目指すとしています、

 海自(に限らず、空陸もそうだし、そもそも日本という国がそう)は人口減少という、「人口の圧政」に直面しており、人員減少は避けられません。従来と同じやり方をすれば、それは艦艇数の減少で対応することになりますが、それでは所定の防衛力を確保出来ません。であるが故に、いずれUSV化する哨戒艦を「異端」として受け入れ、防衛力整備を根本的に見直し、人口の圧政と戦っていくことに尽きる、厳密な制度設計と速やかな着手、そして漸進的な実施が是非とも必要である、と結んでいます。

 素晴らしいの一言です。同じ海自OBでも、先月号の記事とはまったく違います。我々がプロ(この場合は元職)に期待するのはこういう記事です。昔を懐かしみ、「ボクの艦隊が変わっていくのが許せない」という記事ではありません。

 FFM22隻の整備が終わったら、DDGやDDの代艦整備が行われるでしょう。文谷先生はこんごうは代艦を建造しても基本機能が同じだから無駄だ、改装して使い続けるべきだと主張されていますが、そこに省力化という観点が抜けています。海自の公表値ではこんごう型の乗員数は約300人、あたご型約310人、あさぎり型220人、むらさめ型170人、たかなみ型175人、あきづき型200人です。あさひ型は記載ありませんでしたが、あきづき型とほぼ同じでしょう。
 近代化改装により約200人で運用出来るか?難しいでしょう。自動化を想定していない部分をどんどん自動化しなければなりませんから。であれば、乗員数200人で同等以上の能力を発揮できるDDGを建造しなければなりません。DDも同様です。そうでないと自然減に対応出来ません。
 前から述べているようにDDGはともかく、DDはもはや新造はありえないかもしれません。30FFMそのままというのはありえないでしょうが、その延長戦上にあるFFがDDを置き換えていくのではないでしょうか?それをUAV/USVなどで補っていくことになるでしょう。哨戒艦と違って、有事が主任務であるDDは、陸上から遠隔操作とはいかないでしょう。であれば、1隻が数隻のUSVを従えて戦闘するということになるでしょう。3隻乃至4隻で構成されていた1個護衛隊は、1隻の有人艦と数隻の無人艦で構成されるようになるかもしれません・・・いや、それを目指すべきでしょう。実質無人で航行・戦闘が出来る艦に意思決定のために少人数乗り込むという手もあるでしょう。ただ、人が乗ると烹炊員と医官が必要です。医官は特定の艦にだけ乗せて、必要なら移送という手もあるでしょうが、食事はそうはいきません。全自動調理機が開発されれば別ですが。そう考えたら、人は特定の艦に乗せた方が良いと思います。次の世代(今のDDの置き換え)ではまだ省力化を進める程度で、将来的に小型のUSVを活用する程度でも、その次の世代はそうならざるを得ないと思います。DDGも同様だと思います。

 また、今後LHAや「空母」を整備するなら、それらの乗員を捻出するために全ての艦艇で劇的なまでの省力化や無人機・艦の活用が必須だと考えます。 理想、あるべき論は別にして、現実の人口減少に対応するためにはそのような改革が必要です。

 ところで、海保はどうするのでしょうね?規模は小さいものの、なり手不足は同じだと思います。元々大人数乗っていませんし、省力化といっても、性格上人数も必要そうです。さて、どうするでしょう?USV/UAVは活用するでしょうが・・・。

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