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世界の艦船7月号の記事

 116ページからの香田洋二氏の記事「海自OBの提言 令和時代の海上自衛隊はどうあるべきか② ウォー・シミュレーション2028」を読んで、なんともいえない気持ちになりました。一言で言えば、「そこまで堕ちたか」です。東西冷戦時代の思考からまったく脱却できておらず、失礼ながら、現役の自衛艦隊司令官でなくて良かったと思います。

 中国が国内事象から台湾へ武力侵攻するというそもそもの今回の想定はありえないでしょう。その際に米軍が台湾を救援し、日米安保が機能する状況であるのは理解できません。いくら軍事力を強化したとはいえ、米と正面からぶつかるだけの能力はありませんし、その意志もないでしょう。東西冷戦時代のソ連とは違います。経済的、政治的な対立はありますが、あの時のソ連と違い、米中は強く結びついており、戦争は中国を破綻させます。
 軍事的な面だけを考えても、中国が台湾へ武力侵攻するとしたら、日米が台湾を見捨てたと判断できる場合でしょう。日本を巻き込むとしたら日米安保が機能できないと判断した時でしょう。もちろん、読み間違って、介入はないと判断したものの実際には米が介入してきた、ということはありえるかもしれません。ですが、今回はそういう想定になっていません。架空戦記の舞台設定としても余りにお粗末です。
何故そのような設定になったのか?理由は簡単です。そうでないと自分の主張上困るからです。中国には東西冷戦時代のソ連を演じてもらわなければ困るからです。米軍の来援までの潜水艦と機雷を掃討するのが海自の役割でないと困るからです。

 軽武装の哨戒艦とDDよりも性能・装備に劣るFFMはあっさりやられてしまい、いずもの航空機搭載により対潜能力が低下した護衛艦隊は米空母機動部隊を中国潜水艦から守れず、自らの返り討ちに合い、掃海艇の数が大幅に減ったので、機雷を排除できず、米空母が触雷。台湾と先島諸島は中国に占領され、継戦能力を失った日米は停戦。だから、今の方針では駄目だ。対潜水艦戦と対機雷戦が海自の本来の任務であり、それを最優先しなければ駄目だ、とまあ、そう言いたい訳です。
 いやいや、本当に大丈夫でしょうか?これは、米海軍と海自を愚弄し、中国海軍を過大評価(10年先の話とはいえ)しているのですが?関係各位から、香田氏はいったいどうしてしまったのだと思われませんか? 後輩から怒りの声が上がらないか心配です。

 はるな・しらね型DDH時代の八八艦隊なら米空母を中国潜水艦から守れるのでしょうか?対潜能力が相対的に低下と言いますが、八八艦隊時代の1個群にSHは8機です。仮にいずも型にF-35Bを搭載しても、SHも搭載出来ます。DDGも半数の4隻はSHを搭載出来ます。ひゅうが型2隻もいます(頑張ればF-35Bを搭載出来なくもないですが)。ソナーも進化しています。それから比べると大幅に向上しているでしょうし、当座、10年程度なら維持出来るでしょう。そもそも4個護衛隊群はDDの数は変わっていません。どうして対潜能力が低下しているのでしょう?あなたの現役時代よりも後輩が怠けているからですか?能力向上を怠ったからとありますね。つまり、DDの新造がないからだといいたいのですね?ところで、あなたの現役時代、演習でもシミュレーションでも良いですが、SHとDDとどちらが潜水艦を沈められました?素人の私には、現在の水上艦による対潜水艦戦はその過半をSHによっていると思いますが、プロは違う見方をするのでしょうか?DDのソナーで探知して、アスロックや対魚雷で潜水艦をばんばん沈められたのでしょうか?

 従来のDEとFFMを比べてみましょうか?対潜能力は低下していますか?SHも搭載出来ますよ?VLSが後日装備されればアスロックの類も使えます(個人的にはもはや価値は低下していると思いますが)。もちろん、防空力も強化されるでしょう。DEの代わりに配備された旧型DDと比べても劣らないでしょう?FFMが22隻整備されたら、DDH/DDGを除く、SHを搭載した(SH不足は解消するとして)水上艦が42隻もそろいます。懸念すべきはDDの買い替えではなく、SH不足でしょう。DDHは別にして、DD/FFM/DDGに1機ずつ搭載しても46機必要です。後はDDHですが、仮に3機ずつ「しか」搭載しなくても12機ですから、合計58機。ひゅうが型はそのままでF-35Bを搭載しないのなら有事の際に3機ということはないでしょう。更に言えば、大型汎用DDは2機ずつ搭載可能ですよね?搭載能力を合計すれば70機でもまだ足りません。でも、そんなにSHはありませんね。

 いずもにF-35Bを搭載しても対潜能力が低下しないことはもちろんわかっていますよね?あなたの懸念はそんなことしたら、対潜水艦戦以外に使われてしまうじゃないか、でしょう?本来対潜水艦戦用の4個護衛隊群(と地方隊)を他に任務に使うのはけしからん、と、そういうことですよね?

 そういえば、あなたが現役の頃よりも10年先には稼働潜水艦は増えているはずですが、そこはスルーですか?このシナリオでもDDは駄目でも潜水艦はちゃんと戦果を上げているようですが?
 
 掃海艇は数は確かに減っています。でも、機材は進歩しています。FFMによる掃海は確かに未知数ですが。

 ああ、そうえば、いずもを「防空改造」としていますが、かがはそのままなんですかね?ついでにいえば、F-35B搭載を「防空改造」と呼ぶのも、カビの生えたような冷戦時代の思想ですね。いずも型「空母」は、決して防空艦じゃないはずですよ。

 それから米空母は潜水艦の魚雷2発で大破航行不能になるのでしょうか?そんなにやわですか?まあ。細かい突っ込みを入れればきりがないのでやめておきます。正直、こういう方が自衛艦隊司令官だったのかと思うとぞっとします。その当時に有事にならなくて良かったです。
 あなたが望む「ボクの海自」はもうどこにもありません。昔、あなたが想像していた輝かしい未来の海自は幻です。限られたリソースの中で最大限の効果を発揮することがが今の海自に求められています。兵力は増えません。減ることはあっても増えません。何故なら日本は少子高齢化が進み、相対的な経済力もどんどん低下していきます。GNP1%枠の範囲内でも世界有数の「海軍」を保有できた時代とはもう違うのです。こんな冷静時代の思考そのままで、哨戒艦みたいなおもちゃは要らない、FFMみたいな安物は嫌だ、ちゃんと汎用DDを買い換えてくれないと嫌だ、掃海艇減らしちゃ嫌だ、F-35Bなんか要らないとだだをこねても仕方ないでしょう。そこらのミリヲタじゃなくて、一応、元プロなんでしょう?

 一応、4個護衛隊群32隻は当座維持されますが、いつまでも維持できるとは思えません。以前も述べたようにもはや汎用DDの新造は無い(出来ない)かもしれません。DDHとDDG以外の汎用DDは今後はFFMに置き換えられていくことも十分考えられますし、3個・・・もしかしたら2個護衛隊群にまで減らされるかもしれません。その代わり、水陸両用戦部隊は増強されるでしょうが。
 「空母」中心の2個群(CV+DDGx2+FFMx5程度)と「揚陸艦」中心の2個群(LHA+LSD+DDGx2、FFMx5程度)になってもおかしくはないです。あ、いや、これでもまだ贅沢すぎるか(苦笑)。

 まあ、いずもを空母化すると対潜水艦能力低下するという謎主張が、艦や群の能力の話ではなく、作戦、用兵上の話だと分かったのは収穫です。私には同意出来ませんが。更に言えば、ひゅうが型がああなったのは、これらの冷戦思考派との綱引きの結果でしょうね。いずも型が「空母」になれたのは幸いでした。

 おまけ、海自が建造する4900t型油槽船は、基準排水量4900tではなく、搭貨重量4900t(6000kl)だったのですね。知りませんでした。2000tと300tの輸送艦も搭貨重量だったりするのかなあ???まあ、船だから搭貨重量で、艦艇なら基準排水量かな?

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