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2030年代以降の海自:深刻な人手不足

 一見、海自は拡大を続けています。いずも空母化(正確にはF-35B運用化)の先には、「空母」の建造が見えています。揚陸艦の強化も必須ですから、強襲揚陸艦の装備もされるかもしれません。潜水艦は22隻体制になり、12隻からなる哨戒艦部隊も創設されます。汎用DDの整備は中止されるものの、数はFFMで埋められ、総数は維持されます。イージス艦も待望の8隻体制が整います。
 ですが、予算と人手が不足するのは陸空と同じです。いや、陸空よりも深刻でしょう。艦艇乗り組みは希望者が減っていると伝えられます。特に潜水艦はどうやって22隻分を確保するのでしょう?FFMは2組のクルーを用意?空母?その乗員はどうやって確保します?更にLHA!?無理です。今でも不足しているのですから。
 演習時などは別にすれば陸空は勤務時間が終われば、普通に暮らせます。三交代勤務の部署もありますが、それにしても、終われば普通です。空は勤務も基本的には建物の中ですし、トイレやお風呂も普通に使えます。陸だって、演習中でなければ同じです(老朽化している話は別にして)。しかし、艦艇乗り組みはそうはいきません。一度出航すれば、休憩時間はあるにしても24時間勤務、仮眠あり、みたいな状態です。そして、ネットにはつなげられません。今、自衛官にやろうとする世代はもはや普通にスマホを使っている世代です。スマホがずっと使えない生活は耐え難いでしょう。機密保持の問題は別にすれば勤務時間が終われば普通に使えます。少なくとも技術的には使える環境です。しかし。艦艇はそうはいきません。ようやく海自もこの問題解決に取り組みつつありますが・・・潜水艦だけはどうにもなりません。潜航中の潜水艦でスマホが普通に使えたら、世界中の潜水艦部隊の指揮官は悩みません。技術的にどうにもならないのです。

 解決策は?まずは必要な人数を減らす必要があります。そして待遇改善です。

1.4個護衛隊群の削減
 今のDDHx1、DDGx2、DDx5からなる4個護衛隊群を今後も維持できるとは思えません。とりあえず1個、将来的には2個減らすことも考えるべきでしょう。FFMは年2隻建造するとして22隻ですから、2030年代前半に整備がとりあえず終わりますが、逆に言えば、そこまでDDの新規建造は無いといえます。2030年代にむらさめ型は艦齢30年を越えます。たかなみ型ですら30年程度に達します。近代化改装はするにせよ、代艦の建造は必要です。しかし、多くても年2隻ですから、10年程度はかかるでしょう。その頃にはあきづき型の代艦が必要です。そして、普通に使っていても、ひゅうがの代艦も検討しなければなりません。更にLHAだといっていると予算は足らないでしょう。1年に2隻どころか、1年に1隻建造できれば良い方かもしれません。
 予算は足らない、人は足らない、となれば?減らすしかりません。もし、将来、本当に海自が「空母」を運用するとしたら、空母を中核とする2個群にまで減らす必要があると考えます。まあ、それは普通にいけば、「いずも」型代艦ですから、かなり先の話ではあります。ですが、遠い未来の話もでありません。いつかはそういう時がきます。

2.省力化の推進
 FFMでは省力化が進められてますが、他艦艇でもどんどん省力化を進めていく必要があります。人手不足に対応するためです。直接的には必要な人数を減らすのが目的ですが、同時に居住性の更なる改善も必要です。同じ大きさで乗員が半分になればそれだけ居住性は改善出来ます。
 まずは潜水艦。今後建造される3000t型はもはや手遅れですが、その次の潜水艦では乗員数を劇的に減らさなければなりません。有事の戦闘力発揮に支障が出る?動かせなければその前でこけます。一気に半減は無理でしょう、次の次には30数人程度にまで減らすべきです。平時の一直を指揮官含めて8人以下として四交代制で32人を目標にしたいです。12時間は完全に自由時間(睡眠含めて)とします。もちろん、この状態では戦闘は出来ません。あくまで平時の航海に必要な人数です。武装は全て自動化します。対地対艦ミサイルは垂直発射筒、魚雷も自動装填装置を設け、出航後は調整や整備などはしないですむようにします。問題は烹炊(海自でなんといっているかはすみません、知りません)。人数減らすと専門要員をおくのが難しくなります。食事の用意そのものは交代でやるとしても、調理は簡単ではありません。士気にかかわる問題ではありますが、恐らくは冷凍食品とレトルトが主にならざるを得ないでしょう。自動調理器の実用化は20年後でも困難でしょうから。潜水艦は・・・仕方ないと思います。
 水上艦もどんどん自動化を進めて省力化します。ダメージコントロールはある程度割り切るしかありません。艦の保持よりも人命保持を優先としましょう。もちろん、そのためにも極力沈みにくいようにする工夫は必要ですが。兵装は基本的には全て自動化を進めます。100人くらいを目標にしたいです。30FFMよりも重武装ですが、より自動化が進むことを期待します。

3.待遇改善
 省力化しても艦艇の大きさは小さくしなければ、艦内空間に余裕は生まれます。全員が個室・・・は無理でも半個室位の空間を設けましょう。水上艦は機密保持の措置は別途講じるとして、少なくともダウンロードは自由に出来る通信環境を整備すべきです。潜水艦もある程度の通信(私信)を定期的な通信の際に認めましょう。通信ブイをあげて短時間送受信する際にテキストベースですが、私信も取り扱います。そして、潜水艦こそ、2クルー制を導入し、一人の負担(航行中の時間)を減らします。効率だけみれば、保有数の1.5倍位のクルーがいれば運用は出来るでしょう。ある程度の数は整備や改修などでドック入りしているでしょうから。ただ、さすがにころころ乗艦が変わるのも問題でしょうから、ここは頑張って2クルー用意しましょう。省力化した分をくいつぶして従来並の人員は必要ですが、待遇改善でなんとか。
 居住空間を拡大できれば、女性も潜水艦に乗せられるようになるでしょう。場合によっては乗員が全て女性の潜水艦もありえるかもしれません。
 潜水艦の話が続きますが、基本電池とモーターとして、ディーゼルエンジンは発電専用とすべきでしょう。ディーゼルでなくても良いですが、レンジエクステンダー付きEVと同じ構造です。また、燃料電池の研究も続けるべきだと思います。もし、燃料電池で高速航行できるのなら、その方が良いですから。軽油でも動作するのでロータリーエンジンを使うのも面白いと思いますが、新規開発になってしまいます。エンジンが相対的に小さくなればそれだけ手間がかからなくなり、省力化されます。当然、魚雷含めて武装の装填、発射なども完全自動化します。ミサイルは当然専用VLS。

4.共同運用の推進
 空自の時にも述べましたが、航空機部隊は重複を避け、共同運用できるものは極力そうします。哨戒・偵察・情報収集用のUAVの共同運用は必須です。極論すれば固定翼機は空へ移管しても良いでしょう。少なくともUAVは共同運用すべきですし、海独自の早期警戒機もどきや電子戦機の保有は避けるべきです。初等練習機は固定翼機要員、回転翼要員は一つの教育部隊で集中することは出来るはずです。中等から実用機はそれぞれ分かれるとしても。それで効率化できます。

5.民活
 陸自でも述べましたが、民間に委託できる業務はどんどん民間に委託すべきでしょう。英米などで行われているように補助艦艇の運航は民間にやらせることも考えるべきです。日本には日本の事情があり難しいのは理解していますが(先輩の悪行のせい)、民間は必ずしも日本企業である必要はないでしょう。

 陸は一手見合った規模にする(減らす)ことを提案していますが、海はそうはいきません。規模をなるべく維持しつつ、省力化を進めていく必要があります。

 空母の話は別にして揚陸艦の整備は今後当然必要になっていきますが、輸送能力の高いLSDを整備すべきだと思います。「空母」をどうするかにもかかわってきますが、仮にそれがLHAだったとしても、LSDは必要です。20年先にはおおすみ型は当然、新しい艦と置き換えらるはずですから、それは大型のLSD(コストパフォーマンスの高い)であるべきでしょう。

 それとひゅうが型の処遇をどうするかが問題だと考えます。いずも型は空母化するとして、ひゅうが型にもF-35B運用能力を付加するのでしょうか?船体の規模を考えれば不可能ではありません。ですが効率は悪いです。しかし、代艦の建造次期はまだかなり先です。売却できれば良いのですが、適当な買い手が見当たりません。それこそ空母化してどこぞの海軍に売り込みますか?
 一つの方策は揚陸艦化です。といっても大改造するのではなく、一部改修程度で、主にヘリコプター揚陸艦として運用するのです。また、掃海ヘリを搭載したり、掃海艇母艦的な運用も可能でしょう。当然、「第二」艦隊へ移籍します。そんなことをしたら、いずもの空母化と合わせて、せっかくの対潜プラットフォームがあという意見もあるでしょうが、気にすることはありません。必要ならSHを搭載すれば良いだけです。そもそも、現状、DDHには本来の搭載力と比べるとわずかな数のSHしか搭載出来ていません。空母や揚陸艦の余技として搭載出来る程度の数にすぎません。何ら問題ないでしょう。

 それから哨戒艦(OPV)ですが、トリマラン型の話やらも聞こえてきますが、以前も述べたようにローコストな船にすべきだと思います。巡視船(例えば、くにがみ型)にDEクラスのレーダー、ESM、ソナーなどを搭載したもので十分です。ヘリが降りられる飛行甲板は必要ですが、固有の搭載機は不要です。武装も3インチ砲も要りません。機銃(RWS)程度で十分です。RAM位は搭載しましょう。必要に応じてSSMを搭載可能な場所位は用意しておくとして。これらは戦闘用ではありません。平時の監視用です。有事に役に立たない?そんなことはありません。水陸両用艦隊の外周での警戒に使えますし、軽輸送も出来ます。UAVのプラットフォームにもなるでしょう。

 それらを踏まえて、私の提言する2040年の海自主要戦闘部隊は以下の通り
・第一艦隊=外洋艦隊
 空母任務部隊(CV=いずも型x1、DDGx3、DDx6)2個
・第二艦隊=近海及び水陸両用戦艦隊
 水陸両用任務部隊(DDH=ひゅうが型x1、LSDx2、FFMx8、MSCx8)2個
 哨戒任務部隊(FFMx3、OPVx6)2個
・第三艦隊=潜水艦部隊
 潜水艦部隊(ASRx1、SSx11)2個

 この他、各地方隊所属の小型艦艇や補給や訓練、支援艦艇がありますがそれは省略します。そのうちAEOは6隻またはそれ以上に増強を考えていますが、これは前述の通り民間委託すべきです。

 それから陸の時に述べませんでしたが、一時、陸自が輸送艦を保有・運用するという話がありましたが、結果的には共同運用する部隊になりそうです。掃海艇が減ると小さな港に入れる船が減りますから、中小型の輸送艦は必要でしょう。陸自が大幅削減されるのであれば、運用の主体は船舶工兵・・・船舶施設部隊ではなく、海自で行うべきでしょうね。また、現在2隻存在する輸送用にチャーターしているフェリーは更に数を増やす必要があるでしょう。これらの運行も民間委託か「軍属」とします。

 20年先で2個群に減らすのは減らしすぎ?仕方ないと思います。人手と予算は限られます。いずも型の後継に本格的空母を建造するとすれば更に人手と予算は取られます。こんごう代艦は4隻ではなく2隻に減るでしょう。汎用DDも同様です。場合によっては、DDは全てDDGにすることもあるかもしれません。今のDDGよりは小型でVLSは一組にして、基準排水量は6000t台に抑えて、その代わり数を建造します(イメージ的にはあきづき型のVLSを64発に倍増し、イージスシステムを搭載したような船)。ただし、総数は減ります。その場合には、CVx1、DDGx6で1個任務部隊を編成ということもあるでしょう。または、DDGは8隻体制を維持し、DDは代艦を建造せず、FFで置き換えることもありえるかもしれません。FFM30の武装強化型です。その場合はCVx1、DDGx4、FFx6位でしょうか。
 出来たら哨戒任務部隊は3個に増強したいです。そうですね、更にその先(ただし、前述の案の未来では必ずしもなくいわばパラレルワールド)として

・第一艦隊=外洋艦隊
 空母任務部隊(CVx1、DDGx1、小型DDGx5)2個
・第二艦隊=近海及び水陸両用戦艦隊
 水陸両用任務部隊(DDHx1、LSDx2、FFMx8、MSCx8)2個
 哨戒任務部隊(FFMx3、OPVx6)3個
・第三艦隊=潜水艦部隊
 潜水艦部隊(ASRx1、SSx11)2個

 で、どうでしょう?必要なら哨戒任務部隊のFFMを空母任務部隊につけます。CVはどんと大型艦を建造します。なに、空母は大きい方がコストパフォーマンスは良いです。F-35Bを24機、ヘリ各種12機程度を搭載します。より正確に言えば格納庫にそれだけ格納出来るようにします。有事にはF-35Bを12機追加搭載出来るだけの飛行甲板にします。英米などで開発されれてV-22の類をベースにした早期警戒機も搭載したいです。英国に期待?艦の運行要員は省力化を極力進めます。航空要員はかなりの人数になるでしょうが、これは空の担当だから問題ありません(笑)。予算と人は?DDGx6、DDx20の後継を小型DDGx10、FFMx3にするので、その差分でまかなえるでしょう。

 どうしても3個護衛隊群を死守したい?その場合は。

・第一艦隊=外洋艦隊
 空母任務部隊(CVx1、DDGx2、FFMx5)3個
・第二艦隊=近海及び水陸両用戦艦隊
 水陸両用任務部隊(LSDx3、FFMx8、MSCx8)2個
 哨戒任務部隊(FFMx3、OPVx6)2個
・第三艦隊=潜水艦部隊
 潜水艦部隊(ASRx1、SSx11)2個

でどうですか?LHAは無し。その代わりおおすみ型は1隻をLSD2隻で置き換え。ひゅうが型2隻の代理艦として空母を1隻建造、残りの2隻はとりあえずいずも型。DDGは8隻を6隻で代替(とりあえずこんごう型4隻は新型2隻で置き換え)とします。DDは全廃、FFMで代用です。

 まあ、細かい編制は趣味の世界です。メッセージは全体として数は減るはず、です。

 本格的空母はいずれにしてもかなり先2040年代よりも後でしょう。当座は、いずも型空母2隻だけです。これらは、艦隊の防空や離島防衛のために使われるのではなく、主に平時のプレズンスのために使われると考えます。ですから、搭載されるF-35Bは10機程度で十分です。重要なのはステルス戦闘機が搭載されている、ということですから。当然、「攻撃」にも使えます。というか、「攻撃」が主になるでしょう。ただし、実際に攻撃するのではなく、攻撃するぞと見せかける・思わせることが、ですが。精々10機程度の1000ポンドのJDAMを2発搭載しただけの戦闘機の攻撃力そのものはたかがしれています。しかし、それが突然攻撃してくるかもしれないのです。当然、攻撃されるかもしれない側は備えなければなりません。その負担はかなり大きなものになるでしょう。有事ならその空母を沈めてしまえばよいですが、奇襲攻撃はそれでは防げません。このように負担を強いるのがいずも型空母の主任務になるであろうと考えます。もちろん、日本が実施に都市や工場、道路や鉄道、港などを攻撃することはありえません。現憲法下では不可能です。しかし、相手がどう思うかは別です。能力がある空母が遊弋していたら、いや、自衛隊は平和憲法があるから奇襲攻撃してきたりしないから大丈夫、と思えますか?もし、そう思ったら、まぬけ、でしょう。常に空母を監視し続けなければなりませんし、いざ有事という時には即座に攻撃出来るようにしなければなりません。また、防空システムの充実も必要です。
 こうして平時に負担を強いることにより、南西諸島などへの侵攻を困難にすることが出来ます。不可能ではないでしょうが、所要兵力は増大します。海に限らず、陸空の主任務は日本に対する侵攻のコスト(所要兵力や結果的に生じる事態含めて)をいかに引き上げるか、でしょう。それが抑止力です。世界第二位のF-35フリートはそのための有力な手段ですし、いずも型空母も同様です。水陸機動団にしても、反撃手段はあるんだぞ!それでも来るなら来い、でしょう。

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