« エリーゼ退院 | トップページ | ライオンズ優勝 »

驚異の集団

 また、台風ですね。秋だから仕方ないですが、週末、雨が多いなあ。

 さて、集英社新書 佐藤賢一著 「テンプル騎士団」の感想です。

 帯に「知っているようで知らない」と書かれていますが、まさにその通り。十字軍の時代に誕生した騎士団の一つでイスラム教徒との戦いで活躍、という程度しか知りませんでした。が、読んでびっくり。単なる狂信者(失礼)の集団ではなかったのですね。
・明確な指揮命令系統を有する常備軍
・統一された装備・軍装
・明確な階級(役付き、騎士、従士、トルコ式歩兵)
とまあ、これだけでも、当時の軍隊(封建軍)とはまったく違い、言わば、極めて近代的な組織です。貴族でない場合は、騎士にはなれず、従士にしかなれないのですが、その場合でも能力と働きによって、旗手、トルコ式兵長、軍務長補になれ、例外的なものではありますが、アッコンの支部長への道も開かれていました。試験などによる選抜ではなく、身分=生まれによるものなのは前近代的ではありますが、士官と下士官兵の区別とほぼ同じです。兵として入隊しても准士官までは出世できます。
 更に
・強固で広範囲に設けられた管区や支部という組織
・強固な経営地盤:寄進された土地へ権利だけではなく、商売でも稼ぐ
・強力な兵站組織:西方から前線である東方へ物資、人員、資金を輸送
ととても12-14世紀の組織とは思えません。戦いためにではありますが、とにかくお金を稼いでいます。そのために街道まで整備しています。更に巡礼の人々を便乗させ、当然お金をもらっています。
 更に驚くべきは
・世界初の近代的銀行!?
・諸侯の財務管理代行
 です。戦うために資金がいるので稼いで、そのお金を送るために工夫しているうちに他人からも預かるようになり、貸付や送金まで。貸付は建前としては利息は取れませんが、手数料名目で、ある事例では二割ほどとったとか。日本と比べると良心的な金利ですね。
 そして、テンプル騎士団の支部にお金が蓄えられており、例えば、パリでお金を預けた後、それを東方で引き出すことが手形だけで出来るようになっています。また、東方でお金を借りて、西方で返すことも。何せ、各地に支部があり、それは城郭であり二線級かもしれませんが、騎士・兵士がいて安全です。
 手数料は取られますが、テンプル騎士団に預ければ安全でかつ便利となれば皆が利用します。諸侯(フランス王やイギリス王なども含めて)までお金を預ける始末。更には管理まで委託しています。

 なんなんですか、この組織は?そんな組織だったと高校の世界史の教科書には書いていた記憶がまったくないのですが・・・・・。

 しかし、余りにスーパーすぎて、フランス王フィリップ4世により、つぶされてしまい200年程度で歴史を閉じます。まあ、ねえ、戦力・経済力含めて、当時欧州最強集団ですからねえ。王としては目障りでしょう。まあ、異端をでっち上げて一斉検挙したフィリップ4世の手腕もほめるべきでしょうが。
 拷問で嘘の自白をさせたのもえげつないです。いや、それそのものはいつの時代でもあるのですが、後になって、強要され嘘の自白をしたのですというと、罪が重くなるというのが(苦笑)。異端審問では異端の事実を認め、悔い改めれば、「和解した物」として罪は軽くなり、悔い改めないと終身刑。が、もし、一度、悔い改めたのに前言撤回して、異端に戻れば、最堕落として死刑、火あぶり決定。それも念頭においての自白強要だったのでしょうね。

 無論、テンプル騎士団側にも問題はありました。十字軍は終了し、東方もイスラムに奪われ、戦いはほぼ終わっていましたから、テンプル騎士団本来の存在意義は失われていました。民衆も含めて皆に嫌われてきていました。そうでなければ、フィリップ4世もつぶせなかったことでしょう。
 とはいえ、存続していたらどうなったんだろうと思わざるを得ません。私はこの頃の欧州が必ずしも先進的地域だったとは思いませんが(中国の方が進んでいた面は多々あると思う)、テンプル騎士団は異常な位先進的です。

 ただし、元々が狂信者(失礼)の集団ではあります。それ故、戦争では強かった(恐れずに戦う)ものの、無茶な突撃で大損害をこうむったことも多々あります(総長以下、戦死・全滅・捕虜になるなどなど)。

 それにしても最初は信仰心で東方へいった騎士が始めた小さな集団が何故これほど近代的かつ強力な集団になれたのでしょう?経済基盤は寄進によるものではありますが、この当時にあれだけの組織・仕組みを考えて実現することが出来たのは何故なのでしょう?それはこの本では説明されていません。滅ぼされて、資料(文書)が廃棄されたというもあるのでしょうが・・・。それを知りたい、そう思いました。

|

« エリーゼ退院 | トップページ | ライオンズ優勝 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/528857/67221661

この記事へのトラックバック一覧です: 驚異の集団:

« エリーゼ退院 | トップページ | ライオンズ優勝 »