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来年度の防衛予算概算要求を見て

 平成31年度概算要求の概要が発表されました。
http://www.mod.go.jp/j/yosan/2019/gaisan.pdf
 あくまで要求なので決定ではありませんが、色々と変化が見られますね。

4ページの「平成31年度概算要求の考え方」に要約されています。肝心な部分を引用すると

「陸・海・空という従来の領域にとどまらず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を横断的に活用(クロス・ドメイン)した防衛力の構築が必要。」
 単純に従来の陸海空に分けられない領域にようやく本格的に対応するということですが、これは、「伝統的陸の任務」の割合を減らすということも意味していると思われます。しばらく前に報道されていた海空の基地警備を陸に任せる話にもつながるでしょう。
 5ページ目にも「海空領域の能力強化 我が国防衛のためには、航空優勢及び海上優勢を確実に維持・強化することが不可欠。」とあります。単純に予算定数だけ見れば陸が減らされて海空が増えている訳ではありませんが、アショアは陸担当になっているので、「伝統的陸の任務」分は大幅に減らされていると言えるのでしょう。この話は冷戦時代からあり、その都度、陸の反発をまねいていましたが、ついに明確にその方向へ舵を切ったと言えるのでしょう。

「日米同盟やインド、豪州といったパートナー国、ASEAN諸国等との防衛協力が我が国及び地域の平和と安定の維持に非常に有効であることを踏まえ、これらを深化・発展させることが可能な防衛力を構築する必要。」
 この方向に向かっているのは明白です。単に中国の脅威に備える、尖閣諸島などの島嶼防衛重視ということではないはずです。本年度予算では「島嶼部に対する攻撃への対応」はIIの2にありましたが、そういう項目はなくなっています。DDHにF-35Bを載せるというのもこっち向きの話だと思います。ただし、集団的自衛権を極めて限定的にしか認めない(行使しない)という現在の解釈と必ずしも合致しません。個人的には方向性は正しいものの、これを推し進めるのなら憲法改正が必要だと思います。少なくとも広く国民に周知し、同意を得る必要があるでしょう。

「防衛力構築には時間を要することを踏まえ、我が国の人口動態、諸外国の軍事動向、将来の技術動向も見据えた防衛力を構築する必要。」
 省力化、無人機の活用、女性が活躍しやすくすること、のはずですが、今回の予算では、III 人的基板の強化の「2 女性の活躍とワークライフバランスのための施策の推進」(これそのものは以前から引き続き行われているものであり、新しいものではない)以外はまだ浅いです。無人機の活用を陸海空全てで推し進める必要があるはずですが・・・。

  個別の内容で興味を覚えたものを。

 大物の新規装備導入は既に話題になっているイージス・アショアだけですね。色々な数字がでていましたが、1基当たりの取得経費:1,237億円だそうです。ただし、SM-6は無し。あくまで弾道弾防衛のみ。うーん、まあ、実際に稼働し始めるまでに装備すれば良いのですが、後から追加するよりも最初から予定していた方が安く上がるということではないことを祈ります。まあ、DDGにSM-6を導入した時に一緒に調達・装備なのかなあ?「まや」は進水したところですが。コストが高いという話はありますが、アショアのメリットは大きいと思います。DDGを貼り付けなくて良くなるのが最大のメリットでしょう。有事の抗堪性はDDGに劣るでしょうが、相手からすると破壊しなければならない目標は増えます。SM-6を装備すれば少なくとも自ら対地ミサイルに対抗出来ますし、それは必要でしょう。後から装備されるものと期待しています。
 アショアで気になるのはレーダーがSPY-6ではなく、LMSSRを選択したことです。米海軍はSPY-6で行く訳ですからそれと異なるレーダーを選んだのが果たして正解かどうか?性能はともかく今後の発展性に不安を感じます。コストはLMSSR方が安いということではありましたが、さて、本当かどうか?
 SM-3はブロックIIとブロックIBを調達。818億円で、その内訳は不明ですが、数十発分。アショアのが含まれるかのかなあ??が、ブロックIBは既存のDDG向けでしょうか?ハイローミックスもありえるかもしれませんが。IBは一括調達も検討とあり、また、「あたご」型はIIA搭載可能に回収するとありますので、「こんごう」型はIB止まりなのでしょうね。

 さて、世間でも一番人気?になりそうなのが、「戦闘機(F-15)の能力向上(2機改修:101億円)」でしょう!JASSMなどの搭載、搭載弾薬数の増加及び電子戦能力の向上等とありますから、AAMの搭載量も従来の最大8発から増やすようです。ミサイルキャリアー化ですね。問題はこれの対象はPre-MSIP機なのかJ-MISP機なのかです。Pre-MSIP機の旧式かは著しく、正直、もはや第一線で使い物にならないでしょう。平時にスクランブルならともかく。近代化改修して使い続けるのか、それとも他の機体と置き換えるのか。それをさっさと決めなければならないのにずるずるとここまできています。まあ、F-22導入失敗のせいだとは思いますが・・・・。Pre-MSIP機はもったいないから近代化改修すべしという意見も多いようですが、いくら丈夫なF-15とは言え、機齢はかなりいっています(Pre-MSIP機は前期型ですから特に)。それを今から多額の予算を費やして改修して使い続けるのが良いのかどうかは疑問です。個人的にはさっさとF-35と置き換える他ないと思います。J-MISP機はF-2後継機(それが何であれ)と置き換えでしょう。
 そう考えるとこの改修はJ-MISP機が対象と思われるのですが、それにしても1機50億円は高すぎるような気がします。その他関連経費(設計変更等)として、別途439億円とあるので、50億円は純粋に機体の改修にかかる費用です。レーダー含めてFCSも交換するのでしょうか?J-MISP機の前回の近代化改修(FCS交換などの)でも年度により違いがありますが、やはり1機50億円程度を費やしています。するとそれに近い大幅な変更なのでしょう。
 それにより、F-15の有効寿命は確かに延びるのでしょうが、J-MISP機の改修であるとすればPre-MSIP機との能力差は更に広がります。J-MISP機ですら近代化改修には多額の費用がかかることを考えると、仮にPre-MSIP機に適用すれば更に費用はかかることでしょう。そうするとやはりどうみてもF-35とさっさと置き換えた方が良いと言えます。J-MISP機ですら、そこまで費用をかける意味はあるのか?と疑問に思えます。
 私自身はF-15は好きな飛行機です。米国製戦闘機の中では、マルヨンの次に好きです。ですが、F-15も既に古いのです。見た目でだまされていますが、もう既に十分に旧式です。人間に例えるならば、ファントム爺さんが延長雇用の人(60歳代)だとするとイーグル兄さんももはや50歳代半ば。役職定年を迎える位でしょう。F-15Jの引き渡し開始は1980年。37年前です。F-4EJと10年程度しか違いません。J-MISP機の製造時期はもっと新しいですけれど。
 F-35は来年度は6機で916億円。本年度は6機785億円、その前は6機で880億円と毎年価格が違いますが、まあ、上を見ても1機150億円。J-MSIP機で50億だとするとPre-MSIP機はもっとかかります。だったら、F-35買った方が良いでしょう。
 それにミサイルキャリアー化するのなら、センサーたるF-35が必要でしょう。それも考えるのなら、Pre-MSIP機は全てではないにせよF-35で置き換えると考えるのが妥当だと思います。AIM-120の導入はF-35だけなのか、F-15にも搭載するのかはこれだけじゃわかりませんが。

 島嶼防衛用高速滑空弾は継続ですが実用化を急ぐようですね。ブロック化してまず出来る物を開発・装備して後から性能向上を考えるようで。日本では珍しいかも?

 UH-X。12億という話でしたが、18億だそうで(6機で110億円)。五割増しかあ。大丈夫ですかね?安いのが取り柄で選んだはずの412EPベースにしたのにここまで価格が上昇してしまって。それに民間型がどれだけ売れるのかも疑問。X-9の方が良かったんじゃないかとも思えますし、コスト重視ならいっそEC145でも良かったような。EC145だと原設計が新しくはありませんが、それを言えば412EPも古いですしね。。

 開発中止になった小松の次期装輪装甲車。その代わりにサンプルを購入するようですね。「次期装輪装甲車導入候補車種の試験用車両(20億円)」という書き方からするとこれはもう既存品の輸入かライセンス生産なのでしょう。国産は断念したに等しいと思います。まるまる輸入が良いとは言えませんが(相応の数が導入されるはずだから)、ライセンス生産で良いでしょう。ライフサイクルコストも含めて安くあがるならこの手の車両は輸入でも良いと思いますが。

 海上作戦センターの整備(36億円)は、やっとかという気がします。島嶼防衛をうたっておきながら・・・でも、これはそれだけじゃないんだろうなあ。もっと遠方も対象にしているのかも。

 電磁波領域の能力強化はサイバー戦と含めて今後当然強化しないといけないものです。今回は特に部地別ではなく、共有を進めるようで大いに結構だと思います。

 それから真面目にやる気になったと思われる項目がありますね。
 油槽船(仮称)の整備(2隻:55億円)
 火薬庫の新設
 滑走路被害復旧の能力向上に必要な器材の取得(9億円)
 事態対処時における治療・後送能力の向上
 左っぽい言い方をすると本気で戦争する気になったといえます。従来の張り子の虎戦略(ああ、これは私が勝手にそう呼んでいるだけ。正面装備重視でとりあえず、強そうに見せかける戦略)から見た目はやや小さくなっても中身も詰まった本当の虎を目指す方向に動き出していると理解します。治療・後送能力の向上は、従来余りレベルが低すぎると叩かれていた分野ですし、ちゃんと向上することを期待します。

 「2 公文書管理の適正の確保のための取組」は、例のあれ対策ですね。ただ、それに関係無く、これは当然必要なことです。外部からの照会に限らないでしょう。内部でも必要な文章を速やかに見ることが出来るようにする体制が出来てしかるべきだと考えます。

 「「あきづき」型護衛艦等の対潜能力向上(マルチスタティック)」というのもありますね。「あさひ」型に準じる能力を持たせるのでしょう。

 自衛隊施設の老朽更新なども含めて待遇改善も少しずつ進むようですね。

 来年度だけで劇的に何かが変わる訳ではないでしょうが、空海重視へ進んでいくのは間違いないでしょうね。

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