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両用戦部隊は3個旅団必要?

  軍事研究5月号の記事、江口博保著、「水陸機動団創設への提言(その1)『水陸機動旅団』三個を構築せよ!」と6月号の「水陸機動団創設への提言(その2)水陸両用作戦を成功させるためのノウハウ 島嶼防衛「統合任務部隊」の中核「水陸機動師団」」の感想です。陸の元プロが書いたもので、全てに同意出来る訳ではありませんが、個々の指摘はなるほど、さすがプロだと思います。実を言うと5月号の感想を書き上げる前に6月号が発売されてしまって続きを読んだので修正して一つにまとめました。

三個旅団は必要?
 それは無茶な、と思います。ただ、根拠は理解出来ます。完全に占領されてから奪回するのは困難でより大兵力が必要になるので、常時部隊を即応(理想的には揚陸艦に乗せて遊弋)状態にして占領される前に守りにつかせるか、完全に占領される前に増援として送送り込むことが必要だという主張にもとづきます。そのためには最低二個、出来たら三個旅団必要なためです。実現可能かどうかは別にしてこれは理に適っています。ただ、5月号の記事では一個旅団を揚陸艦に乗せて遊弋と読めましたが、6月号では1個大隊と明言されており、ローテーションするには最低2個旅団、できたら3個旅団必要という風に補足説明されていましたが。1個大隊で十分か?という疑問はありますが(後述のように小型の大隊なので)、無いよりははるかに良いでしょうね。

 陸自普通科連隊は大隊が存在せず、連隊の下はやや大きめの中隊なのですが、これは司令部機能を有しており、小型の大隊というべきものであるとしています。なるほど。大隊配下の中隊は大隊長の命令を受けて中隊長以下一体となって行動するものですが、陸自普通科連隊の中隊は中隊長の判断である程度独自に行動できるものであるというのが著者の考えです。
 上陸作戦にはこの小型大隊的中隊ではなく、一体となって行動する中隊が適しており(中隊単位でばらばらに上陸することは考えにくいので)、AAV7に合わせた27人の小型の小隊3個と火力支援小隊を合わせて4両で運べる中隊からなる大隊が良く、それ3個を基幹とする旅団編成がふさわしいと主張します。これは現段階で想定されている水力機動団よりも「歩兵」は減少するでしょう。ただ、支援部隊を含めれば、総人数は同程度になるかもしれません。バランスという意味ではそれは望ましいでしょう。
 ただ、中隊の規模は別にして、常時待機が1個大隊だとするとそれは単独行動をする訳ですので、結果、今予定されている水陸機動団の連隊でも良いのではないかとも思えます。大型中隊3個の連隊ではなく、小型中隊4個の連隊ならどうでしょう?総数は大差ありません。陸自の大型普通科中隊の意味を考えるとこの場合は大隊ではなく、連隊が良いように思います。この辺も踏まえて、5月号の段階ではやはり旅団を遊弋させるつもりだったのが指摘を受けたで、揚陸艦の準備が無理と気が付いて大隊に変更したように思えてしまいます。

15基幹部隊体制の変更
 そういう3個旅団を創設するとしてその人員はどうやって確保するのか?再編成しかありません。現状の9個師団、6個旅団の15個基幹部隊体制を改変し、第8師団と沖縄の第15旅団を水陸機動師団へ改変するというものです。第七師団は旅団化し、3個戦車大隊編成へ。戦車の総数が約300両に減らされるので、1個中隊10両、1個大隊31両の小型大隊化を提唱しています。砲も15門1個大隊で20個大隊を編成するとしています。東北は現状維持。また、第12旅団は空中機動師団化(第一空挺団やヘリ団を統合)。第10師団を廃止し、中部方面の3個旅団を第13師団に再編成(単に3個旅団の廃止ではないのは配置場所からのことでしょう)。こうして9個師団(師団数変わらず)、3個旅団の12個基幹部隊体制へ移行するというものです。まあ、3個旅団からなる水陸機動師団を創設するとしたらその位しないと駄目でしょうね。

 それでも北海道に1個師団(第2師団)と3個旅団というのはどうなんでしょうね。演習場の有効活用というのはわかりますが、偏り過ぎていますし、現在想定される主戦場から遠すぎる気がします。それと沖縄の第15旅団は他と性格が違うので現状のまま残すべきではないかとも思えます。九州の部隊は現状のままで、新制第13師団を水陸機動師団にしても良いのではないかと思います。呉に揚陸艦を配置すればセットで運用しやすいです。
 また、師団の下に旅団がいる編制とそうでない編制が出来ているようにも見えますが、もしかすると全ての師団は複数の旅団から構成されると考えているのかもしれません。まあ、昔の甲師団と乙師団のように分かれているのかもしれませんが。

 現状で、「水陸機動団」であって、「水陸機動旅団」ではないのは、恐らく、師団と旅団の数が定められているからでしょう。小型三個連隊を基幹とする部隊なら元々旅団であっておかしくありません。あえて、普通科ばかりなのも(支援火力も持つでしょうが)「旅団」ではないよ「団」だよと言うためとも思えます。そうだとしたらくだらない話ですが、旅団に拘って、無駄な労力、時間を費やすよりは良いといことなのでしょう。言い換えると本来「旅団」に含まれるべき支援部隊は直轄部隊として別途編成されるのではないかと思います。とりあえず歩兵だけ、ということではなくて。それは同じ5月号の訓練レポートからも明らかでしょう。まあ、大隊からなる部隊は自衛隊において旅団に成り得るのか?という話もありますね。その場合も結局、「団」になりそうな気がしますが。
 ですが、改変して師団と旅団の数が同じなら水陸機動師団でも旅団でもそれは問題ありませんね。まあ、著者の主張はこの膠着した15個基幹部隊体制を変えることにも主眼がおかれているように思いますから、その時には関係ない話ですが。

揚陸艦は?
 今想定されている水陸機動団配下の連隊は、AAV7中隊、ヘリボーン中隊、ボート中隊の3個中隊+火力支援部隊(恐らく迫撃砲中心、それと対戦車火器)と伝えられています。ボート中隊は特殊部隊的運用になるので、3個連隊と言っても正面戦力は6個中隊に過ぎません。しかも3個中隊はヘリボーンなので軽装備でしょう。恐らくこれは現状の輸送力に合わせて考えられたものだと思います。AAV7で上陸するとしても、現状のおおすみ型3隻では、同時に投入可能なのは良くて2隻ですから、AAV7は実際には詰め込んで30両程度です。LCACを下ろせばもっと積めますが、他の車両、物資輸送に困ります。小隊の編成は不明ですが、2両で1個小隊とすると1個中隊で10両程度のAAV7が必要です。LCACがあるとはいえ、現実的には1隻で1個AAV7中隊の揚陸が限界で、ヘリボーン中隊はDDHを使うことになるでしょう。ボート中隊は一部は潜水艦、もしかすると一部は護衛艦により輸送されると推測します。言い換えるとおおすみ型1隻+DDHなどで1個連隊を運ぶ想定で部隊が編制されているのだと思います。輸送能力に合わせた部隊編成はそれはそれで一つの方法ですが、本来はどれだけの部隊が必要か、によって定められるべきでしょう。その結果、輸送能力が不足するのならそれに合わせて輸送能力を増強するのが筋です。まあ、予算の制約は無視できませんから、妥協は必要でしょうが・・・。

 編成を変えるのなら揚陸艦の増強は必須です。3個水陸機動旅団を編成出来たとしても、問題は、海自はそれに見合う揚陸艦を保有出来るとは思えないという点にあります。記事でも輸送力の不備は指摘されています。この人員約500人の小型大隊は、AAV7 4両で一個中隊ですから、大隊で全体では14、5両でしょう。それをまとめて運べる2万t程度の揚陸艦の整備を求めています。おおすみ型はLSTの置き換えだったせいか、排水量の割に輸送可能人員が少な目なので、これもまあ妥当だとは思います。とはいえ、旅団を揚陸させるにはそのクラスの揚陸艦が最低3隻(3個大隊分)必要になり、支援部隊も含めれば4隻は必要でしょう。当然、旅団を常時揚陸可能とすれば、下を見ても揚力艦は8隻、常識的に考えれば12隻必要です。艦艇も常時稼働させるにはその3倍の数は必要ですから。2万tの揚陸艦を12隻はさすがに無理でしょう(おおすみ型を退役させるとしても)。それが常時遊弋また即時輸送可能なのは1個大隊だけということであれば、揚陸艦1隻に乗せられますから、3隻あればなんとか、余裕を見て4隻で済みます。ただし、その場合、せっかく3個旅団あっても、上陸させられるのは1個大隊だけですが。

 おおすみ型の置き換えではなく、追加出来るとして、3隻が限度ではないでしょうか?今想定されているのは全通式飛行甲板を持つLHDの様ですが、LSDにすべきではないでしょうか?著者は強襲揚陸艦を望んでいますが、ヘリボーンならDDHでも出来ます。、なので、ウェルドックを重視し、LCAC4隻搭載出来ることが望ましいと考えます。実際にLCACを4隻搭載しなくてもその分、AAV7を載せられます。
 おおすみ型にどれだけのAAV7を載せられるか?LCACは必要ですから、車両甲板(第四甲板)に搭載して、LCAC発進後、ウェルドックに進入して発進するということになるでしょうが、他の車両を載せないのなら、10両は確実に搭載可能なはずです。何故?だって、90式戦車を10両搭載出来るとされているからです。74式なら12両という数字も見かけますので、90式よりは少し小型のAAV7なら12両は確実でしょう。単純に詰め込むだけならもっと載せられそうですが、ターンテーブルやらエレベータもありますので、6両2列の12両か、頑張って7両2列の14両でしょうね。自動車を輸出などで船で運ぶ時のように詰め込めばもっと載せられるでしょうが、通路がなくなり、AAV7への乗り込みが困難になります。実際には全部AAV7という訳にもいきませんし、どの道輸送可能な人員は330人(定数というべきでしょうね)とされているので、AAV7 1両当たり27人だとすると12.2両分です。迫撃砲やら対戦車火器、当座の弾薬、食糧、医薬品などなども搭載する分を考えたとしても、AAV7は14両程度載せれば十分でしょう。トラックなどのソフトスキン車両なら第一甲板にも当然搭載されます。ターンテーブル上などにもう少し載せられるかもしれません。LCACには予め車両を搭載しておけるとと考えます。後ろ側(外側)のLCACに搭載するためには一度外に出さないといけないから無駄です。LCACには機動戦闘車なら2両、戦車なら1両搭載出来ると思います。
 まとめるとおおすみ型1隻で、LCAC2隻、人員330人、戦車2両または機動戦闘車4両、AAV7 14両、大型トラック38台(第一甲板)を運べると想定します(詰め込みになるでしょうが)。

 ここでは、新型揚陸艦はLSD型としてウェルドックはLCACを3隻搭載するとしましょう(4隻がいいけど、さすがに大きくなりすぎる)。おおすみ型はウェルドックは60mx15mなので、90mx15m。車両甲板をおおすみ型と同じ100x13mとすると全長は200m超過。長すぎるので幅を広げる方が妥当でしょうか。15m幅としたら長さは約87mですね。15m幅ならAAV7でも3列いけるでしょう(余裕は減りますが)。細かい計算は面倒なので、車両甲板、車両搭載力はおおすみ型と同じと仮定しておきます。つまり、ウェルドックだけ1.5倍になり、後は同じ。LSDにするので人員の搭載力には余裕が生まれますから、約600人としておきます。なので、新型(LSD)1隻で、LCAC3隻、人員600人、戦車3両または機動戦闘車6両、AAV7 14両、大型トラック38台(第一甲板)を運べるとします。LCAC 3隻は多い?いや、でも、輸送手段は多いにこしたことはありません。また、LCACを2隻に減らして、ウェルドックにAAV7を搭載することも出来ます。ウェルドックは大きい方が良いと私は思います。航空機運用能力はオスプレイを2機搭載程度にとどめます。概ね、ウェルドックを1.5倍にしたサン・アントニオ級というイメージです。

 おおすみ型と新型LSD(想定)の1隻ずつのペアでば
 人員:930人
 AAV7:28両
 戦車5両または機動戦闘車10両
 大型トラック:78両
 LCAC:5隻
を輸送可能でしょう。1個小隊27名=AAV7 1両編成の大隊なら、概ね2個大隊を運べます。また、現在予定されている水陸機動団であれば、支援部隊込で連隊戦闘団を運べるでしょう(その場合、AAV7は28両も要らないので他の車両を搭載出来ます。)。前述の通りLCACを減らしてAAV7をウェルドック内に搭載し、その分、他の車両を多く搭載することも可能です。ただ、これが限界だと思います。このクラスのLSDを3隻追加するのも予算、人員考えると容易ではありません。増強両用戦大隊(世界標準)を即時待機状態(揚陸艦含む)が現状では限界だと思います。

 仮に3個旅団編成、1個旅団を即時待機状態にする場合(遊弋させるかどうかは別にしても)、2個(小型)AAV7大隊を海輸、1個大隊は後からDDHや輸送機(オスプレイ含む)などで空輸するというのが限界だと思います。3個AAV7大隊からなる1個旅団を海輸するとなれば輸送艦は3隻以上必要です。まあ、輸送艦を更に大型化すれば可能でしょうが・・・。勿論、その場合、AAV7の追加調達も必要です。まあ、AAV7は1個旅団分+予備を使いまわすことも出来ますが。

 例えば、与那国島が着上陸の危機にさらされたらなるべく来襲前に空輸で、間にあえばAAV7大隊や支援部隊も海輸で送り込み、先に着上陸を許したとしたら、AAV7大隊2個を逆上陸させ、残りの1個大隊も空輸するまたはDDH経由でヘリやオスプレイで空輸するというところでしょうか。制空権が無ければ空輸は無理ですが、どのみち制空権が無ければAAV7大隊の逆上陸も無理でしょう。

 揚陸艦が3隻(おおすみ型置き換え)であれば、1個大隊しか海輸は出来ず、残り2個はヘリか空輸です。そうなるとさすがに3個旅団は多いと言われそうです(文谷先生は今想定されている水陸機動団ですら多すぎると言っています)。やはり頑張って3隻追加、2隻の輸送艦を常時稼働状態に保つということは必要そうです。経費の問題があるとしたら、陸自海自の違いはありますが、水陸機動旅団を2個にとどめて、揚陸艦の建造経費に回すべきかもしれません。また、建造費がかさみそうなLHDではなくLSDであるべきでしょう。理想とは離れますが、DDHはヘリコプター揚陸艦として使えますから。

 ただ、輸送艦がそもそも不足していると思われるので、水陸機動団の話とは別にしても、追加は必要でしょう。高価なLHDや大型LSDでなくても、おおすみ型をもう1、2隻追加する手もあるかもしれません。そうすればなんとか2隻を概ね常時稼働させられるでしょう。今想定されている水陸機動連隊であれば、おおすみ型2隻+DDH1隻で揚陸は可能です。


まとめ
 1個大隊を即応状態に保つというのは同意します。揚陸艦は3隻追加が限度でしょうし、1個旅団の揚陸は厳しいと考えます。遊弋は現状では困難だと思いますし、そこまで状況が緊迫しているとも思えません。であれば、3個連隊からなる水陸機動団でも支援部隊を充実させれば十分なのではないかと思います。1個連隊を2隻の揚陸艦と共に即応状態にすることが出来ます。3個大隊からなる旅団であるとしたら、2個旅団を編成し、1個大隊を即応状態。2個大隊をローテーションで南西諸島に配置、3個大隊は教育・訓練というやり方も考えられます。
 この感想は5月号の記事を読んで1個旅団を遊弋は出来たらいいけど無理ではないかと思ったことから書き出したので他の適切な指摘については長くなることもあり触れていません。司令部の必要性など今回記述しなかった部分には基本的に同意する、少なくとも反論は無いとご理解ください。

P.S.
 5月号及び6月号の文谷先生は特に突っ込むところがないので感想省略します。当たり前のことを書いていて何故この記事がいるのかよくわかりませんが。6月号は記事のタイトルが大げさで、「ミサイル艇の栄枯盛衰」とかで良いような?わざわざはやぶさ型をひっぱりださなくても・・・。

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