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2016年3月号の文谷先生

 軍事研究2016年3月号の記事「仮想的の変化に合致していない機雷整備 軍港/琉球列島線封鎖に必要なのは汎用機雷 中国海軍を封じ込める海上自衛隊の機雷」の感想です。

 引用されている数値が1960年代でとまっているのはその後公開されなくなったからでしょうか?先生その頃現役とは思えません(ネットで見る限り、私よりも若い人。)から、その頃までしか資料が公開されていないということでしょうね?
弾薬庫が不足している原因は旧式機雷も保有し続けているというのは乱暴な気がします(苦笑)。

 さて、本題です。感想を先に言えば「「仮想的の変化に合致していない機雷整備」には同意出来るけれど、「軍港/琉球列島線封鎖に必要なのは汎用機雷 中国海軍を封じ込める海上自衛隊の機雷」には素直に同意出来ない、です。ただし、前提があります。ろくに公開されていない海自の機雷が先生の主張通りであった場合、です。

上昇・追尾機雷は時代に合わない?
 音響探知による上昇・追尾機雷は時代に合わないと主張されており、磁気探知が重要だと繰り返し強調されています。しかし、技術研究本部50年史によると
http://www.mod.go.jp/trdi/data/pdf/50th/TRDI50_05.pdf
91式機雷(K-RX1)はパッシブソナーだけではなく、アクティブソナーと磁気探知も組み合わせていると書かれています。これがどれだけ機能するかはわかりませんが、そうであれば素人には問題なさそうに思えます。まあ、磁気探知が駄目なのは敷設深度によるようなので(そう書かれている)、状況によってはこれでも駄目というのは理解は出来ます。ただ、少なくとも音響感応だけではありません(先生は音響感応だけは駄目だとしていますが)。なお、大水深敷設に適しているとしていますが、K-RX1は中深度用とされてます。
 また、将来的に静粛性が進む中国潜水艦に対抗困難とまた書かれていますが、将来はともかく、今は問題ないですよね?もちろん、将来を見据えて装備、開発は行うべきですが、現状否定するほど駄目とは思えません。
 上昇・追尾機雷が駄目ということではなく、問題は対水上艦を考えると敷設深度が深いと駄目ということですよね?水深30mに敷設された沈底感応機雷は良いとされていますが、そこを通る潜水艦は、入出港時を除けばいませんよね?潜航するには浅すぎます。結局、対水上艦にしてもこれは先生のお好きな軍港封鎖を想定ですよね?上陸阻止もあるかもしれませんが、琉球列島線の水深ってどれ位でしょう?30mですか?

 それから水上艦を狙うまたは深度30m未満の海域で潜水艦を狙う(入出港以外あり得ないでしょうが)なら、沈底式が良いでしょうが、より深い海では沈底式では水上艦には効果ありません。水上艦だけを狙うのなら83式を使えば良いのでしょうが、これだと今度は潜水艦に効果がありません。潜水艦には上昇・追尾機雷でないと駄目では?上昇・追尾機雷が対潜水用と目されるのは低威力だからではなくて、目標が潜水艦が主、水上艦が従なので、低威力でも良いということじゃないでしょうか?海自が上昇・追尾機雷を重視し続けているとしたら、それは機雷の目標を潜水艦に絞っているから、ではないでしょうか?別の同じ数で高額な機雷を調達するためではなく、現在想定している状況では上昇・追尾機雷が一番有用だから、ではないですか?もちろん、この対潜水艦に絞り込んだ機雷戦という想定が正しいかどうかはわかりませんが。

 相変わらず個々の主張は必ずしも間違っているとは思いませんが、それをまとめるとつじつま合わず意味不明です。結局の所、浅水深敷設用機雷を装備せよということなんでしょう、ね?タイトルにもある「汎用機雷」が何を意味するのかいまいちわかりませんが、係維式磁気機雷でしょうか?沈底感応機雷でしょうか?いずれにもしても敷設する深度によってどの機雷が適するかは変わるはずです。83式機雷は深々度用係維式磁気機雷なので浅い大陸棚には向かないかもしれません。もっとも深々度がどれ位かは定義がわかりませんが。 

 ところで、91式はロケット推進としていますが、前述の技術研究本部50年史には浮力だけと書かれています。どちらが正しいのでしょうね。まあ、実はロケットもあるけど、それは公表していないだけかもしれません。

軍港/琉球列島線封鎖
 まあ、情報が限られるので現在保有している機雷の種類性能についてはこれ以上反論はしません。問題はどのような機雷戦を行うか、です。まず、敵軍港封鎖は憲法を改正しない限り行えません。技術的に可能とする能力を持つのは悪いことではないでしょうが、それを主にすることは出来ないでしょう。
 琉球列島線封鎖は防衛出動が命じられれば可能かもしれません(法的な話)。しかし、どれだけの意味があるのでしょうか?三海峡封鎖はソ連太平洋艦隊を日本海に閉じ込めるのにそれなりに効果はあったでしょう。対馬海峡の封鎖なんか出来るのか?とか、間宮海峡やそれ以外の基地はどうするの?という話は残りますが。
 しかし、対中国を考えて琉球列島線封鎖をしたとしてもその労力に見合う訳の効果があるとは思えません。先生が指摘されているようにどういう機雷であれ厖大な数の機雷が必要です。それらを平時から用意しているのは困難でしょう。そもそも敷設が間に合いません。開戦前から敷設する訳にはいきませんし、開戦後では手遅れでしょう?そして何より、琉球列島線封鎖したとしても他にいくらでも航路はあります。
 維持云々はどうでもいい話でしょう。仮に日中間が戦争状態になるとしても半年一年続くとは思いにくいですし、もし、長期化した場合には機雷だけではなく、ほぼ全ての弾薬が不足しますので、機雷どうこう言っている場合ではなくなるでしょう。

 さて、実際にやってみるとどうなるでしょう?三海峡の深度は琉球列島付近と大差ないように思えます。三海峡の深度はとりあえずWikiで見ると

宗谷海峡:最大60m
津軽海峡:最大450m
対馬海峡:平均90-100m

だそうですから、83式機雷は津軽海峡用なのでしょうね。もし、そうだとすると91式の中深度は対馬海峡でしょうか?幅が広いですし、91式に適していそうです。もっとも浅い宗谷海峡は従来型の係維式磁気機雷を敷設するつもりだったのでしょうか?潜水艦相手なら沈底式でも良いでしょうね。

 琉球列島線と一口に言っても長いので深度は様々ですが、Googleマップで航空写真にして見ると浅い所とやや深い所があり、三海峡と比較すると余り差がないように思えます。場所によって津軽海峡よりも深そうです。それを考えると沈底感応機雷では不十分に思えます。沈底感応機雷が有効なのは浅い海だけですよね。何せ、危険半径は先生も30mと言われています。であれば、水深30m未満でないと沈底式では駄目でしょう。海峡封鎖を行うのなら水深、目標に合わせた機雷を適材適所で使うべきでしょう。場所によって83式や91式も有効だと思います。
 水上艦と潜水艦は通る場所(深さ)が異なりますから、同じ機雷で対応するとしたら、係維式では難しく、上昇・追尾機雷が必要に思えます。もちろん、何段階かに分けてそれぞれの水深別に係維式機雷を敷設すれば対応出来ますが、深いと必要な機雷数が厖大な数に上ります。

対中機雷戦はどうあるべきか?
 港の封鎖は軍事的に有効でしょう。航空機は無理なので潜水艦により敷設するしかありません。ただ、前述の通り、憲法上の問題があり実行不能です。装備しておくのは良いですが、それを主力にするのは無理があるでしょう。そこは憲法改正しない限りは米軍に任せる他ありません(他の国(豪など?)でも良いですが、少なくとも日本以外)。
 では、日本はどういう機雷戦を行うか?これはもう手堅く上陸されそうな時にそこに敷設するしかないでしょう。水上艦でのんびりとはいきませんから航空機か潜水艦ですが、時間が無いことを考えたら航空機でしょうね。少なくとも事前に掃海しない限り揚陸は出来なくなるので、時間は稼げます。これには91式は高級すぎるかもしれませんが、前述の通り深度にもよると思います。潜水艦で敷設出来る機雷の充実は(今、そうでないのなら)必要でしょう。
 時間があれば水上艦で敷設も出来ますが、恐らく、今後の戦争ではそのような時間は取れないでしょう。そうであれば航空機か潜水艦による敷設が主になると思われます。
 実際に軍港封鎖は無理ですが、ポーズとして機雷敷設用潜水艦の整備はやっても良いかもしれません。別に改造しなくても魚雷管から発射できる機雷の保有とそれを敷設することを任務とする潜水艦の存在を公表するだけで良いでしょう。あくまで、上陸阻止のためだとすれば良いのです。実際必要なのですから。で、それを相手がどう解釈するかは、相手の自由です(笑)。

 琉球列島線は非現実的として、一部に上昇・追尾機雷を敷設してそこの通過を妨害することは出来そうです。ここに敵潜水艦が深々度で通過して欲しくない、というところに敷設するというやり方はあると思います。どれだけ意味があるかはわかりませんが。

 まとめると現実的には上陸が予想される場所に上陸阻止・妨害のための機雷敷設が主になると考えます。状況を考えれば、それには潜水艦による敷設能力の強化が必要でしょう。それは結果的には軍港封鎖能力を持つことになり、抑止力として意味があると考えます。この場合、上昇・追尾機雷は適切な装備とは考えられず、浅深度用の潜水艦により敷設可能な機雷の整備は必要と考えます。上昇・追尾機雷は海峡封鎖用にこそ適しています。もし、現在、潜水艦から敷設可能な機雷が不足しているのなら、今後装備すべきと考えます。

 上昇・追尾機雷は今の日本には合わないという点では結論は先生に近いです。ただ、琉球列島線封鎖は非現実的だと思いますし、上昇・追尾機雷はむしろ琉球列島線封鎖に適していると考える点で大きな違いがありますが。

 ところで、K-RX2(91式機雷=K-RX1の潜水艦敷設型?)は試作で終わったという話で正式化されていないようですね。記事に出てきた15式は正体不明です。ただし、15式機雷そのものは存在しているようです。平成27年度調達予定品目(中央調達分)の中に納期2017年1月で出てきます。
http://www.mod.go.jp/epco/supply/jisseki/choutatuyotei_pdf/27_danka.pdf
まあ、91式の後継機雷でもおかしくはないですね。なお、一緒にMK55/52(N)機雷用発火装置なんても調達されているのでこの両者も現役のようですね。倉庫があふれるほどかは別にして古い機雷も保管されているのは確かなようで。

 以下に「新型機雷(沈底機雷)」というのが乗っています。名前は書かれていません。
http://www.mod.go.jp/trdi/data/pdf/60th/2-3.pdf
航空機、水上艦、潜水艦から敷設し、通峡阻止、着上陸阻止用で、対水上艦用機雷のようです。平成15年度から平成18年度にかけて所内試験終了と書かれています。これが実用化されたかは不明。次期防内で技術開発に着手予定と書かれています。これが実用化されたかは不明ですが、時期からすると15式である可能性もあるとは思います。ただ、15式は91式系列と同じ上昇・追尾機雷という話とは食い違いますが。今必要なのはこれでしょう。

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