« 7月の文谷先生 | トップページ | A1試乗 »

空母の格納庫

 気になって再度色々確認してみました。

 まず、コロッサス級から。前回の推定では約1600平方mとしました。図面からリフト間の長さを割り出すと資料1にあった84mとほぼ一致します。そうすると前部リフト前にも格納庫がない限り、約1600平方mという数字は正しそうです。
 ぐぐってみるとWikipedia(英語)に原設計では41機搭載だったが、飛行甲板上の駐機エリアを拡大させたことにより、1942年の段階で、バラクーダ24機とシーファイヤ24機の組み合わせ、またはバラクーダ18機とシーファイア34機になったとあります。
https://en.wikipedia.org/wiki/1942_Design_Light_Fleet_Carrier
なるほど、これが48機の根拠 ですね。 戦闘機を増やせば52機です。この記述から、露天繋止を前提としていることがわかります。ところが、ここには格納庫の長さは136mx16mだと書かれています。イギリス航空母艦史のトライアンフの写真のキャプションに135.6mx15.8mの格納庫という記述もありました。うーん、前回の資料1との差は何でしょう?リフトを含んでいるのかもしれません。つまり格納庫の空間の長さ。で、そのリフトは資料1によると二基合計で27.4m。これで128.6m。まだ足りません。後5mかあ。前部リフト前にも格納庫があったのでしょうか?
 まあ、ともかく、135.6mx15.8mとすると約2142平方mです。37機で約58平方m、42機で約51平方m、48機で約45平方 mです。どうにもはっきりしません。

 他の英空母と比較してみましょう。イラストリアスは資料1によると約139x19mなので約2627平方mです。この数字は図面から読み取れる前後リフト間の長さと一致するので正しいでしょう。イラストリアスのコンセプトは飛行甲板の装甲化というよりも格納庫の装甲化ですから、リフトの前後に空間はないはずです。イギリス航空母艦史によると搭載機数は36機ですが、これは設計当時の英国産艦載機を全て格納庫に収めた場合の数でしょう。1機当たり約73平方mです。コロッサス・マジェスティック級よりは多いです。当たり前ですが、より広い格納庫で同数以下の搭載力しかないことはありえません。想定している搭載機の違いなのは明らかでし ょう。イラストリアスとその改良型の搭載機数については、かなり昔ですが、以下で述べています。
http://homepage3.nifty.com/MOY/whandvw/illustrs.htm
 イラストリアス級といってもは時期により格納庫の広さが異なり、前期中期後期型に分けられます。一般的に前期型36機、中期型(インドミタブル)56機、後期型73機という数字がありますが、格納庫の広さは、それぞれ約2627平方m、約3364平方m、約3825平方mです。単純にそのまま1機当たりの面積を出すと、それぞれ約73平方m、約60平方m、約52平方mと減少していきます。前期型は時期から考えて当然ですが、従来の英国製艦載機を想定しており、後期型は当時主力になっていた米国製艦載機を想定した数字であろうと推測出来ます。なので 、逆に言えば、後期型と同じ搭載機で考えれば(1機当たり52平方mで計算すると)前期型でも約50機は搭載出来ます。
 アークロイヤルはイギリス航空母艦史では搭載機は72機と書かれています(イラストリアス級の倍)。格納庫の面積は約5685平方mとかなり広く、イラストリアス級の倍以上あります。72機で計算すると1機当たり約79平方mです。ただ、資料1では実は54機になっており、この場合は105平方mです。従来型の英国製艦載機を格納庫に収納する場合には54機というのは妥当な気がします。もっともイラストリアス級との比較で言えば、72機でも余裕はあります。仮にイラストリアス級後期型と同じ53平方mを基準にすると107機!搭載出来ることになります。ま あ、そこまではいかなくても、仮にアークロイヤルが生き残っていれば、戦争末期には100機近く搭載していたかもしれません(不自然ではない)。これらを基準にすると1機53平方mの場合にはコロッサス・マジェスティック級の搭載機数1600平方mとして約30機、2142平方mとして、40機です。 
 米空母と比較してみましょう。比較的規模が近いインデペンデンス級の格納庫は資料2に79mx16.7m=1318平方メートルという数字がありますから、コロッサス・マジェスティック級の前後リフト間の格納庫面積とほぼ同じです。一般的には45機搭載とされていますが、当然これは露天係止を含めた数字でしょうし、実際の搭載数が45機だったとも限らないようです。資料2では31機(艦戦 12、艦爆9、艦攻9、その他1)という数字があり、これが設計時の搭載機数かもしれません。とりあえず31機とすると1機当たり42.5平方m、45機だと29.3平方mです。資料2にはヨークタウン級は166mx19mで約3154平方m、エセックス級は199mx21mで約4179平方mと書かれています。不思議なことに搭載機数の数値はどちらも91機。ヨークタウン級にはその他5(6?)機とありますが。例によって全部を格納庫に収納出来る訳では無いで、標準編成航空隊が91機ということなのでしょう。実際に搭載機数は異なるはずです。まあ、ともかく、91機とするとヨークタウン級で1機当たり約34.7平方m、エセックス級で45.9平方m。飛行甲板の広さがかなり 違うので、露天係止可能な数もかなり違うとは思いますし、格納庫の広さとそれが比例する訳ではないですが、相対的な大きさの関係は同じでしょうから、45機だと搭載してなんとか離発艦出来る最大数、という気がします。露天係止を前提とした場合の1機当たり格納庫面積は米艦載機だと30-40平方m位、まあ、ヨークタウン級の35平方mが妥当なところでしょうか。それを基準にするとインデペンデンス級は37機、コロッサス・マジェスティック級は1600平方mとして45機、2142平方mとすると61機です。うーん、やっぱりコロッサス・マジェスティック級の格納庫は約1600平方mなのではないでしょうか?イラストリアスにそれを適用すると75機搭載出来ます。1/3は飛行甲 板上に露天係止でしょうが。
 Wikiの記事のバラクーダ24機とシーファイヤ24機は間違いではないと思えます。また、米国製の艦載機を最大限度搭載すれば60機近くいく可能性はありそうです。ただ、飛行甲板が広いとは言えないので、運用は困難でしょうから、実際にはそこまでは無理かな。一方、イラストリアスも米空母のようにやれば70機くらい搭載出来る可能性はあると思います。いずれにしても何をどのように搭載するかで搭載数はかわってきますので、空母の箱というか器の大きさを比較するならやはり面積を基準に比較すべきだと思います。厳密には飛行甲板上にどれだけ駐機させられるかを検討しないといけないのですが、一段式の場合、格納庫が広ければ飛行甲板も広いはずなので 、今回の比較でも目安にはなると思います。

 日本も他の空母と比較してみましょう。前述の資料では、加賀が約10060平方m、赤城が約8640平方m、大鳳が約5250平方mと書かれています。残念ながら翔鶴型は記載がないようです。加賀が日本の空母の中で最大の搭載力を持っていたのは間違いないと思われます。実際に戦争前期の中大型空母6隻の中で加賀だけが多く搭載している事例はあります。赤城は排水量は加賀と同等ですが、常に加賀よりも少ないですが、格納庫の広さがそれを示しています。蒼龍が57機とすると1機当たり100平方mです。それを単純に当てはめると加賀は約100機、赤城は約86機、大鳳は52機となかなか良い数字ですが、加賀と赤城がちょっと多いで すかね。ウイキの加賀の項目には出典不明ですが、常用の2段だけで7493平方mで赤城よりも970平方m、翔鶴よりも1780平方m多いと書かれています。逆算すると赤城は6523平方m、翔鶴は5713平方mです。うーん、加賀と赤城はこっちの数字の方が妥当な気がします。前述のは補用機用とされている三段目を含んだ数字なのかもしれません(三段目は含まないとリンク元には書かれていますが)。そうだとすると加賀75機、赤城65機でなかなか良い数字です。ただし、翔鶴と蒼龍の数字が同じになってしまいます。翔鶴は57機になってしまいますから具合悪いですね。翔鶴が1780平方少ないは間違いかなあ。でも、別のところに5545平方mという数字があり、信濃が4860平 方mとあります。そうすると翔鶴と蒼龍の格納庫の面積がほぼ同じというのはあながち間違いではないかもしれませんが・・・・やっぱ、なんかひっかかります。加賀と赤城の違いは補用機用を含むかどうかの違いで説明出来ますが、大鳳が約5250平方mで、翔鶴は5713平方mというこの差は妥当に思えます。蒼龍で約5735平方mというのが正しいとすると搭載力(実際の搭載数)の差は露天係止分の差=飛行甲板の大きさということになります。
 実際、図面を見ればわかる・・・と思ったら、世の中にはちゃんと既にやっている人がいます。赤城の格納庫の図に実際に並べてみています。
http://d.hatena.ne.jp/ita/20140330/p1
 いやあ、赤城の格納庫ってやたら複雑な形ですね。真珠湾攻撃の時で、5 4機格納、9機は収まらず甲板上。ミッドウェー海戦の時は54機なので全て収まります。6空の6機は分解して補用機扱いで搭載したのでしょうね。赤城が最後まで生き残ったとして
 烈風:18機、流星:32機:合計50機。
 流星は翼が折りたためるので意外とつめます。烈風はこれは本当に大きくなって場所食っていますね。

 この方面白いことに米国製艦載機を収めて見ています。
 F6F:21機、SB2C:15機、TBF:18
うーん、結局、54機で大して変わらないでね。?感覚的にはもっと収まるのかと思いましたが。

 更にこれは海外ですが、翔鶴型も同様です。
http://warships1discussionboards.yuku.com/topic/21205/Graf-Zeppelin-is-given-priority-and-completed-then?page=6#.Vaeggfl8oVp
  数を数えたら、一段目40機。二段目29機の合計69機。リフト上に1機ずつ乗っていますが、これはリフトに乗せたらこんな感じという意味でしょう(実際にそこに1機ずつ搭載していたことがあるという意見もネットで見かけますが)。69機格納庫+露天係止ということでしょう。格納庫は当然単なる長方形じゃないので(米空母はそれに近いけれど)面積は手間をかけないと出てきませんが・・・。補用機12機は本当に搭載していたのかよくわかりませんが、分解してすきまに搭載でしょうか??まあ、ともかく、常用72機の過半は格納庫に収まっています。赤城と比べると面積は狭いのですが、翔鶴の方が形が長方計に近いので効率が良いということでしょう。
 で、問題の蒼龍・飛龍との差です 。翔鶴で詰め込んで約70機だとすると面積が同じならそれに近い数が入ってしまいそうです。そうなると一般的に57+補用機18機=75機と書かれているのですが、蒼龍・飛龍は補用機も格納庫内に収めていたのでしょうか?ただ、翔鶴の方が新しいので、それはそれで変な気がします。翔鶴の格納庫の面積の数字が誤りなら一発解決なんですが・・・。後は蒼龍のデータが、格納庫の床面積ではなく、リフトも含む格納庫全体の空間の面積だったとしたら?うーん、それでもせいぜい300平方m程度減るだけですよね(面倒なのでちゃんと計算していません)。
 蒼龍の格納庫の平面図は見つからなかったのですが、横から見た図ならありました。そこで、長さを比較してみます。図面に定規を当てて全 長との比率で求めた数字なのである程度誤差はあるとは思います。

 蒼龍
  上部格納庫:前部48m 中央44m 後部42m:合計134m
  下部格納庫:前部18m 中央44m 後部42m:合計104m

 翔鶴
  上部格納庫:前部45m 中央48m 後部50m:合計143m
  下部格納庫:前部32m 中央48m 後部50m:合計130m

 単純に長さを合計すると蒼龍が238m、翔鶴が273mですから、翔鶴が約15%長いです。

仮に幅が同じ(そんなことはありえない。同じ艦でも場所によって幅が違うし)と仮定しても、13%翔鶴が広いはずです。全幅(水線部)の違い(蒼龍:21.3m、翔鶴:26m)を考慮すると完全に比例しなくて も相応に翔鶴の格納庫の方が幅は広いはずですから、22%位広くてもおかしくありません。長さと合わせると単純計算でも38%広いはずです。57x1.38=78.7です。38%は行き過ぎでも、72/57=1.263と26%くらい広くても不思議ありません。蒼龍が正しいとすると翔鶴は7243平方m、逆に翔鶴が正しいとすると(5713平方mを採用して)、蒼龍は4523平方mです。
 加賀が約10060平方m、赤城が約8640平方m、大鳳が約5250平方mが正しいとしたら、翔鶴が約7200平方mで、蒼龍が約5700平方mというのが妥当に思えますが・・・。加賀と赤城は補用機用の格納庫を含んだ数字とするとこの辺が納得出来る数値です。
 ただ、蒼龍の格納庫 が約5735平方m、長さが二段合計で238mとすると幅は平均で24mになってしまいますが、これはあり得ません。全幅は21.3mしかありませんし、飛行甲板も最大26mです。開放式格納庫ならあり得るかもしれませんが日本の閉鎖式格納庫でそれは無理でしょう。翔鶴が二段合計で273mで約5713平方mとすると平均幅は20.9mです。図面から幅を読み取ると17-24m位、一番広い場所で27mですので、全幅26mであることを考えても平均21mというのは妥当でしょう。翔鶴はやはり約5700平方m位だと思えます。一方、蒼龍の格納庫平均幅が18mだと仮定すると4284平方mです。19mで4522平方m、20mで4760平方m。うーん、18mは無理かなあ。17mだと4046平方m、16mだと3808平方m。うーん、良くて17m?すると約4000平方m位でしょうか。
 そうすると、加賀の常用機の格納庫面積が約7493平方mが正しく、赤城は約6523平方m、翔鶴は約5713平方m、大鳳が約5250平方mだと考えられます。翔鶴は約571 3平方mで69機格納庫に収まるとすると1機当たり約83平方m。同じ艦載機で、大鳳は63機。蒼龍は4000平方mとすると48機格納庫に収まります。なかなか良い数字です。加賀は90機、赤城は79機で、赤城がやや多いですが前述の通り、格納庫の形状が複雑なので効率が悪く、結果的に翔鶴よりも単位床面積当たりの搭載力は下がると考えられます。
 翔鶴は図面があるので時間があれば面積をもう少しちゃんと測定してみたいと思います。

 ちなみにもし、日本がコロッサス級と同じ空母を作ったとします。格納庫面積1600平方mとすると格納庫におさめられるのは19機に過ぎません。カタパルトがないのでこのサイズでは露天係止はそれほど出来ませんから、有用な空母にはなり ません。この点からも雲龍級を建造したのは当時の日本としては正しいと思います。

 なお、以上の推論はかなり乱暴ではあります。格納庫は綺麗な長方形ではありませんのであくまで概算ですが、当たらず遠からずだとは思います。相対的な差が分かれば十分ですから。

資料1 "AIRCRAFT CARRIERS OF THE ROYAL AND COMMONWEALTH NAVIES",David Hobbs著、Greenhill Books
資料2 "Norman Friedman U.S.AIRCRAFT CARRIERS AN ILLUSTRATED DEGIGN HISTORY SHIP PLANES BY A.D.BAKER III
Naval Institute Press

|

« 7月の文谷先生 | トップページ | A1試乗 »

戦史・軍事」カテゴリの記事

コメント

>加賀が約10060平方m、赤城が約8640平方m

これは、たしか加賀は補用の格納庫面積を含んで、赤城は含んでいない数値だったと思います。
赤城の補用数値は明らかになっていないのか、みた事ありませんが、合計でも加賀とほぼ同じか、やや足らない程度だったと思います。

個人的にはトン数から搭載機を割ってみた場合、赤城や加賀に比べて、翔鶴やズイ鶴はずっと効率の良い積み方をしているのだと感じます。

投稿: | 2015年9月 5日 (土) 23時06分

コメントありがとうございます。翔鶴型や蒼龍型は効率は良いと思います。やはり戦艦や巡洋戦艦からの改造だと効率は悪いのでしょうね。特に赤城は格納庫の形状がめちゃめちゃで。

投稿: MOY | 2015年9月20日 (日) 23時10分

<a href=https://www.homeadvisor.com/tloc/Miami-FL/Sliding-Door-or-Tracks-Repair/>Sliding Door Repair</a>
Sliding Glass Door Repair Services in Miami, FL
Where do you need Sliding Door or Tracks Repair Pros?

Answer a few questions about your home project.
Within seconds, get matched with top-rated local pros.
Compare quotes and choose the best pro for the job.

投稿: RobertUnoge | 2020年4月16日 (木) 21時05分

Petit dîner longuement attendu, n’est pas donné, mais chèrement vendu http://acheter-accutane.wifeo.com Misce bene.

投稿: accutane | 2020年4月28日 (火) 17時11分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 空母の格納庫:

« 7月の文谷先生 | トップページ | A1試乗 »