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AWは上手に着地

 Motor Fan illustrated vol.32、「ミッドシップ
MIDSHIP LAYOUT ミッドシップ 理論と現実」を今ごろ買いました。5月15日発売ですが、何故か見逃していました。ミッドシップ馬鹿としてはあってはならないことでした。
 さて、新旧のMRが取り上げられていますが、その中にAWも含まれています。ページ62から65。書いたのは沢村慎太郎氏。一言で言えば、ベストではないが、うまくバランスのとれた車、という評価でしょう。
 X1/9と比較されています。これは当然でしょうね、この手の横置きFFの量産車のコンポーネントを流用してつくられた最初の量産MRはX1/9ですから。無論、それまでにも市販され、相応の数生産されたMRは、914やヨーロッパなどなくはありませんが、それらはX1/9やAWと比べると数は少なく、また、エンジンも縦置きです。
 良い悪いは別にして、横置FFコンポーネント流用MRはX1/9に始まり、AWとフィエロが続いて、今日に至っています。この流れの中にはSWもNSXもビート、AZ-1、MR-Sと国産量産MRが全て含まれます(NSXについては異論がある人もいるかもしれませんが、まったく違うパワートレインを新規開発した訳ではありませんから。)。
 コンポーネント流用といっても、結局、パワートレインとサブフレームなど一部の部品が流用出来るだけで、サスペンションも基本は同じにしても、結局、実質専用設計になっていくのは自然な話です。なので、NSXもこの流れに含めているのです。
 当時のFFはまだ前方排気だったので、排気管がエンジンの下側を通るため、エンジン位置をさげられないとありますが、これはデフなどの関係もありますから、専用パワートレインでないと元々難しいでしょう(ドライブシャフトを上向きに角度をつけて取り付ける手もありますが)。後方排気とはいえ、MR-Sのエンジンが必ずしも低くありません。
 X1/9との対比で、AWはホイールベースが10cmほど伸びているが、これは右ハンドル前提の設計及び居住性への考慮が原因だろうとしています。右ハンドルの話は別途述べますが、まあ、トヨタ基準で最低限度必要な空間があるのでしょう。
 とはいえ、絶対的には長いという訳ではありませんし、ホイールベース・トレッド比は約1.6であり、これは所謂、黄金比率です。X1/9はホイールベースはAWよりも10cm短いものの、トレッドも狭く、ホイールベース・トレッド比はやはり約1.6です。
 また、記事中にもありますが、X1/9は燃料タンクをシート後方に縦型に配置しており、その隣にスペアタイヤが乗せられています。これに対してAWはセンターコンソール下に配置されており、スペアタイヤはフロントの荷物室の後方側の隔壁に取付けられています。当然ながらX1/9よりもAWは低い位置に配置されており、燃料タンクが重心点付近に配置されいるので、より優れています。
 結果として、AWは重心点がホイールベースの中心と一致し、その高さもドライバーシートの腰の高さにあります。これを沢村氏も評価されています。そして、AW乗りなら分かるでしょうが、これがドライバーを中心に曲がっていく感覚の理論的裏付けです。
 MRはドライバーを中心に曲がって行くと良く言われます。しかし、必ずしもその感覚が味わえる訳ではありません。そして、私が所有した・運転した車の中でもっともそれを感じられるのがAWです。これはエリーゼであろうと、ヨーロッパであろうと、ビートでろうと、SWであるうと、ボクスターであろうとAWにはかないません。重量配分だけ見ればボクスターがより優れていますし、重心も低いとは思いますが、あのAWでの旋回感覚は味わえません。
 それから、これは他でも聞いた話ではありますが、AWのセッティングにロータスがかかわっており、比較的穏便なセッティングにしたのはロータスの助言によるものという話が紹介されています。
 そして、SWに言及した後で、最後に以下の文章で締めくくれられています。引用します。「初代MR2は、ただでさえ難しい市販ミッドという世界の中の、微妙な立ち位置に上手く着地していたのだと思う。」これはAWという車を良く言い表した文章だと思います。AWは絶対的には高性能ではなく、ピュアスポーツを目指したものでもありませんが、出来上がった車は、実にうまくバランスの取れたMRになっていると思います。

 ところで、右ハンドル前提で設計すると足下が苦しくなり、ホイールベースが伸びるという話ですが、これは良く言われることですが、疑問があります。左だろうと右だろうと車は通常は左右対象ですから空間・幅は同じです。一般的に言われているのは左ハンドルだとホイールアーチの脹らみをフットレストに使えるが、右ハンドルではそれをよけてアクセルペダルを配置しないといけないので足下が苦しいというものです。
 ABCペダルに必要な幅は左だろうと右だろうと同じです。問題があるとしたらそれはフットレストです。左はホイールアーチの脹らみをフットレストに使えるが、右ハンドルはその空間を別途用意しないといけないから空間が不足し、結果としてホイールアーチに干渉しない程度までドライバーを下げなければいけないということですが、それは奇弁です。ある程度の位置なら確かに左が多少有利でしょう。そしてFRならそれは正しいでしょう。トランスミッションとドライブシャフトが車体中央に走っていますから、それとホイールアーチとの間の残された空間をABCだけで使うのかABCFの四つで使うのかの違いが出ます。
 でも、4WDではない2WDのモノコック構造のMRでは関係ありません。車体の中心部はなにもありませんから。ですから、フットレストは車体の中心線上に設ければ良いのです。エリーゼを見て下さい。まさにそのようになっています。
 無論、4WDやバックボーンフレームがあればそうはいきません。ですので、ヨーロッパ(初代の)の右ハンドルにはフットレストはありません。でも、モノコックならそんなごついフレームはありません。
 更に言えば、ドライバーをもっと前進させたらどうでしょう?ホイールアーチはフットレストとして使いにくくなります。左ハンドルでもフットレストをホイールアーチの横に設けなければならなくなります。もっとも実際にはサスペンションやステアリングラックなどの関係で極端には前進はさせられないでしょうが。でも、程度問題であれ、ホイールアーチが適切なフットレストになるとは限らないというのは言えます。実際、同書p38のカウンタックの足元の写真を見ると、ホイールアーチをフットレストにしているのではなく、側面にフットレストを設けて、アクセルペダルは中央側にくぼませて設けられています。
 ですから、モノコック構造の2WDのMRに限定すれば右ハンドルが不利ということはありません。AWはそれよりも乗り降りを含めた居住性への配慮からドライバーを極端に前進させていないだけでしょう。もしかすると重心点がドライバーの腰の位置になるように配慮した・・・のかもしれません・・・こっちは偶然かまたはドライバーの位置が決まった後にそこに落とし込んだだけかもしれませんが。

 後、同書で不覚!と思ったのがホンダT360。これがミッドシップだったとは・・・知りませんでした。なんたること。ミッドシップ馬鹿としてあってはならないことです・・・これも。

 p24から「市販ロードカーの運動性追及ならもはやミッドシップレイアウトは要らない」という記事があります。日産の技術者の話をまとめたものです。私はそうは思いません。所詮、日産には今、それをやるだけの力(単なる技術力という意味ではなく、会社の体力含めて)がないだけでしょう。4WDが良いというのはわかりますし、それならフロントエンジンベースで十分というのもわかります。そして、MRが難易度が高いのもわかります。が、突き詰めればやはりMR。私はそう信じています。それは言葉や理論ではなく、走らせればわかります。AWにロードスターは絶対勝てません。
 そして、日産がMRにしないのは、後部座席を捨てきれないからでしょう?違いますか?関係ないというのなら、R35 GT-Rは立派ですが、2シーターにしてもっと小型軽量に作ってみせろといいたいです。出来ないでしょう?GT-Rは911と同じで2シーターにはなれないはずです。それは運動性追求上の必要性ではなく、商品性の確保のためではありませんか?

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